「最近、食事をするときに顎がカクカク鳴る…」 「朝起きると、なんだか顎が重くて痛い」 「大きく口を開けようとすると、こめかみの辺りが痛む…」
浜松市にお住まいのKさん(女性)も、そんなお悩みをお持ちでした。 最初は「疲れかな?」と見過ごしていましたが、だんだん痛みが強くなり、大好きなフランスパンを食べるのも億劫になってしまったそうです。
特に40代を過ぎた女性は、お仕事、家事、育児、そしてご自身の体の変化など、様々なストレスや負担がかかりやすい時期。Kさんのように、原因不明の「顎の不調」に悩む方は少なくありません。
その不調、もしかしたら**「顎関節症(がくかんせつしょう)」**かもしれません。
ちなみに結論から述べさせていただくと。当院では動画撮影を術前術後に行っており、Kさんは改善を認めたため治療は終了となっております。
「病気なの?」「治るの?」「何科に行けばいい?」 そんな不安でいっぱいのあなたへ。大丈夫です、安心してください。
この記事では、多くの女性を悩ませる顎関節症について、その原因から、浜松市の歯医者でできる治療法まで、専門家の視点で優しく、わかりやすく解説していきます。 あなたの「顎が痛い」お悩みを解決するヒントがきっと見つかります。

そもそも「顎関節症」って何?
顎関節症とは、特定の病気の名前ではなく、「顎の関節(耳の前あたりにあります)」や、その周りの筋肉(頬やこめかみなど)に何らかの異常があり、痛みや不調が出ている状態をまとめた呼び名です。
重症化すると、口が開かなくなったり、食事がとれなくなったりすることもありますが、多くの場合は早期の対応で改善が見込めます。
どんな症状が出たら顎関節症を疑う?
顎関節症には、代表的な「3大症状」があります。
もし一つでも当てはまるなら、注意深くご自身の状態を観察してみてください。
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顎が痛い(関節痛・筋肉痛)
「顎を動かすと痛い」「口を開けたり閉じたりするときに、耳の前あたりが痛む」「硬いものを噛むと痛い」といった症状です。
また、顎の関節そのものではなく、頬やこめかみの筋肉が重だるく痛むこともあります。
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口が開きにくい(開口障害)
「指が縦に2本(約4cm)入らない」場合、開口障害が疑われます。
急に口が開かなくなった場合や、徐々に開きにくくなっている場合もあります。
無理に開けようとすると、強い痛みを伴うこともあります。
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顎を動かすと「音」がなる(関節雑音)
口を開け閉めするときに、「カクカク」「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった音が耳の前あたりで鳴る状態です。
Kさんのように「音が鳴る」ことから自覚する方も非常に多いです。痛みがない場合もありますが、顎の関節内部で異常が起きているサインかもしれません。
あなたも「顎関節症」かも?今すぐできるセルフチェックリスト
ご自身の症状が顎関節症かどうか、気になりますよね。
まずは簡単なセルフチェックをしてみましょう。以下の項目にいくつ当てはまるか、数えてみてください。
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□ 1. まっすぐ口を開けたとき、指が縦に2本入らない(約4cm以下)
(目安:人差し指と中指を揃えて入れてみてください)
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□ 2. まっすぐ口を開け閉めしたとき、顎が左右どちらかにズレる
(鏡の前でゆっくり「あー」「んー」と動かしてみましょう)
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□ 3. 口を開け閉めするときに、耳の前あたりで「カクン」や「ジャリ」という音がなる
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□ 4. 左右の奥歯で同じように噛めない(片方で噛むクセがある)
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□ 5. 頬やこめかみの筋肉が、押すと痛い、または重だるい感じがする
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□ 6. 朝起きたときに、顎や頬にこわばりや痛みを感じることが多い
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□ 7. 理由のわからない頭痛や肩こり、首のこりに悩んでいる
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□ 8. 日中、仕事や家事に集中しているとき、無意識に歯を食いしばっていることに気づく
いかがでしたか?
もし2つ以上当てはまる項目があれば、あなたは「顎関節症」である可能性、あるいはその「予備軍」である可能性が高いです。
特に「音がなる」だけだったのが「痛み」も出てきたり、「口が開きにくく」なってきた場合は、症状が進行しているサインかもしれません。
「これくらいなら大丈夫」と我慢せず、早めに専門家である歯医者に相談することが大切です。
なぜ? 40代の女性が「顎関節症」になりやすい3つの大きな理由
浜松市で多くの患者さまを拝見していると、特に40代・50代の女性に顎関節症の症状を訴える方が多いと感じます。
なぜ、この年代の女性に多いのでしょうか。それには、日常生活に隠された3つの大きな理由が関係しています。
1. 無意識の「食いしばり」や「歯ぎしり」(TCH)
これが、現代人における顎関節症の最大の原因と言っても過言ではありません。
皆さんは、リラックスしているとき、上下の歯はどうなっていますか?
実は、健康な状態では、唇を閉じていても上下の歯は触れ合っておらず、2〜3mmほどの隙間が空いているのが普通です。
この隙間を「安静空隙(あんせいくうげき)」と呼びます。
ところが、ストレスを感じたり、何かに集中したり(PC作業、スマホ操作、料理中など)すると、無意識のうちに上下の歯を「じわーっ」と接触させてしまうクセがある方がいます。
これを**「TCH(Tooth Contacting Habit=歯列接触癖)」**と呼びます。
夜中の「ギリギリ!」という強い歯ぎしりだけでなく、この日中の「じわーっ」とした弱い力での接触が、長時間続くとどうなるでしょう?
顎の筋肉はずっと緊張しっぱなしになり、顎関節には持続的な圧力がかかります。
マラソン選手がずっと走り続けて足が痛くなるように、顎の筋肉も悲鳴を上げて「顎が痛い」「だるい」といった症状を引き起こすのです。

2. 日常生活のストレスとホルモンバランスの変化
40代は、ご自身のキャリア、お子様の進学、ご両親の介護など、人生の中でも特に多層的なストレスがかかりやすい時期です。
ストレスを感じると、体は無意識に緊張し、交感神経が優位になります。
その結果、筋肉はこわばり、先ほどお話しした「食いしばり(TCH)」や「夜間の歯ぎしり」が強くなる傾向があります。
さらに、女性ホルモン(エストロゲン)の減少も関係していると考えられています。
女性ホルモンには、関節の軟骨や靭帯を保護する働きがありますが、40代以降、更年期に向けてホルモンバランスが大きく変動すると、関節がダメージを受けやすくなるのです。
ストレスとホルモンバランスの「ダブルパンチ」が、顎関節症の発症に影響している可能性があります。
3. 悪い姿勢(スマホ首)と「噛み合わせ」の不調和
何気ない日常の「姿勢」も、顎の健康に直結しています。
例えば、スマホを見るときの「うつむき姿勢」。
この姿勢は、首や肩の筋肉(胸鎖乳突筋など)を強く緊張させます。首や肩の筋肉は、顎を動かす筋肉(咀嚼筋)と連動しています。
首がこると、肩がこり、そして顎の筋肉もこわばって、顎関節症の症状を引き起こすことがあるのです。
俗にいう「スマホ首(ストレートネック)」は、顎にとっても大敵です。
また、片方だけで噛む「偏咀嚼(へんそしゃく)」のクセや、過去に治療した銀歯の高さが合っていない、歯並びが悪いなどで「噛み合わせ」が不安定だと、顎の関節に偏った負担がかかり、痛みや音の原因となることもあります。
その「顎の痛み」放置しないで!顎関節症を我慢するリスク
「音が鳴るだけだから」「ちょっと痛いだけだし、そのうち治るかも」 浜松市でも、このように症状を我慢してしまう方は少なくありません。
しかし、顎関節症のサインを放置すると、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
リスク1:痛みが慢性化し、食事が楽しめなくなる
最初は「時々痛む」程度だったものが、次第に「いつも痛い」という慢性的な痛みに変わっていくことがあります。
硬いものが食べられない、大好きなものを食べるのが苦痛になる、といった状態は本当につらいものです。
痛みをかばうために、柔らかいものばかり食べるようになり、栄養バランスが偏ったり、食事が楽しめなくなったりする恐れがあります。
リスク2:口が突然開かなくなる(クローズド・ロック)
顎関節の中には、「関節円板(かんせつえんばん)」というクッションの役割をする軟骨があります。 「カクカク」音が鳴っている状態は、このクッションがズレかかっているサインであることが多いです。
これを放置すると、ある日突然、ズレたクッションが引っかかってしまい、口が全く開かなくなることがあります。
これを「クローズド・ロック」と呼び、こうなると食事も会話も困難になり、日常生活に大きな支障が出ます。
リスク3:顔の歪みや、全身の不調(頭痛・肩こり)の悪化
顎が痛いと、無意識に痛くない方でばかり噛むようになります。
すると、片方の筋肉ばかりが発達・緊張し、もう片方が衰えるため、お顔の左右のバランスが崩れ、「顔が歪んで」見える原因になることがあります。
また、顎の筋肉の異常な緊張は、先ほどもお話しした通り、首・肩・背中の筋肉と連動しています。
顎関節症が、頑固な頭痛、肩こり、めまい、耳鳴りなどを引き起こしたり、悪化させたりするケースも報告されています。
顎だけの問題だと侮ってはいけません。
浜松市の歯医者さんでは、どんな治療をするの?
「歯医者に行ったら、何をされるんだろう?」「いきなり歯を削られたりしない?」 そんな不安をお持ちの方もいるかもしれませんね。
顎関節症の治療は、原因や症状の重さによって様々ですが、基本的には「顎の負担を減らし、症状を和らげる」保存的な治療からスタートします。
無理に手術をしたり、歯を削ったりすることは、まずありませんのでご安心ください。
ステップ1:まずは丁寧なカウンセリングと精密な検査
私たちは、まず患者さまのお話をじっくりと伺うことから始めます。
「いつから痛むのか」「どんな時に音がなるのか」「日常生活でストレスに感じることはないか」など、根本的な原因を探るためのヒントがたくさん隠されています。
その後、顎の動き(どれくらい口が開くか、ズレはないか)の検査、筋肉の触診(押して痛い場所はないか)、レントゲン撮影(骨に異常がないか)などを行い、あなたの顎関節症のタイプを正確に診断します。
ステップ2:【主流】スプリント療法(マウスピースの装着)
顎関節症治療で最も一般的で、効果的な治療法の一つが「スプリント」と呼ばれるマウスピースを使った治療です。

これは、夜寝ている間に装着していただく透明な装置です。
このマウスピースには、主に2つの重要な役割があります。
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顎の筋肉をリラックスさせる
マウスピースを装着することで、噛み合わせが安定し、顎の関節がリラックスしやすい位置に誘導されます。
これにより、寝ている間の無意識な食いしばりや歯ぎしりによる筋肉の緊張を和らげます。
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歯や顎関節への負担を軽減する
もし歯ぎしりをしても、マウスピースがクッションとなり、歯や顎関節に加わる破壊的な力を分散・軽減してくれます。
「マウスピースなんて、苦しくない?」と心配される方もいますが、保険適用のものから、違和感の少ない薄型(自費)まで、種類は様々です。
浜松市の青木歯科医院では、患者さま一人ひとりの歯型に合わせて精密に作製しますので、ご安心ください。
多くの方が、朝起きた時の「顎のだるさ」が軽減したと実感されています。
ステップ3:生活習慣の改善アドバイス(TCHの是正)
顎関節症は、いわば「生活習慣病」の一面も持っています。
いくらマウスピースで夜間の負担を減らしても、日中にTCH(歯列接触癖)が続いていては、根本的な解決になりません。
そこで、私たちは「TCH」に気づき、それをやめるためのトレーニング(認知行動療法)をご指導します。
例えば、 「PCの画面、冷蔵庫、机の上など、目につく場所に『歯を離す』と書いた付箋を貼る」 「アラームをセットし、鳴るたびに歯が触れていないかチェックする」 といった簡単な方法です。
20分に1度息をフーーっと吐く習慣をつけるなども良いでしょう。
これを繰り返すことで、「歯を接触させない」状態を脳に再教育していきます。
ただ、厳密に言うと、歯の接触自体は悪くないです。
歯の接触が持続すると、様々な悪影響が起こるのです。
ステップ4:その他の治療(お薬、マッサージ指導など)
痛みが非常に強い場合は、炎症を抑えるための痛み止めや、筋肉の緊張をほぐすお薬(筋弛緩薬)を一時的に処方することもあります。
いわゆる「ボトックス」と言われるものですね!
「ボトックス」と聞くと、美容医療のシワ取りをイメージされる方が多いかもしれませんね。 ご指摘の通り、これは「ボトックス(BOTOX®)」というアラガン社の登録商標(商品名)が有名になったもので、医学的には**「ボツリヌストキシン治療」**と呼ばれるものです。
この治療は、緊張しすぎている筋肉(主に「咬筋(こうきん)」と呼ばれる、エラのあたりにある強い筋肉)に、ボツリヌストキシン製剤を注射します。 これは筋肉を完全に麻痺させるものではなく、「緊張しろ!」という神経からの命令を一時的に弱める(ブロックする)働きがあります。
この治療法が、近年「顎関節症」や「歯ぎしり・食いしばり」の分野でも、有効な選択肢として注目されています。
また、ご自宅でできる簡単な顎の筋肉のマッサージ方法や、首・肩のストレッチなどもお伝えします。
歯科医院での治療とセルフケアを両輪で行うことが、改善への一番の近道です。
歯科医院に行く前に。自分でできるセルフケア3選
「歯医者に行くのは少し勇気がいる…」 そんな方のために、まずはご自宅でできる症状緩和のためのセルフケアをご紹介します。
ただし、これはあくまで一時的な対処法です。「痛みが続く」「口が開きにくい」場合は、必ず専門家に相談してくださいね。
1. 顎を休ませる(硬いもの・大きな口を避ける)
顎が痛いときは、顎も「筋肉痛」や「捻挫」を起こしているようなもの。まずは安静が第一です。
フランスパン、ステーキ、おせんべい、ガムなど、硬いものや長時間噛む必要がある食べ物は避けましょう。
また、大きなあくび、ハンバーガーにかぶりつくなど、無理に大きな口を開ける動作も控えてください。
食事は、おかゆやうどん、ヨーグルトなど、柔らかく、あまり噛まなくてもよいものを選ぶと良いでしょう。
また、高さのある枕はTCHを誘発するとも言われています。
普段お使いの枕も見直しが必要かもしれませんね!
2. 優しいマッサージと「温め」
痛みやこわばりがある場合、血行を良くすることが有効です。
痛む場所(頬、こめかみ、耳の前など)を、人差し指から薬指までの3〜4本で、「優しく」「ゆっくり」と円を描くようにマッサージします。 (※強く押しすぎると、かえって痛みが強くなることがあるので注意!)
また、蒸しタオルやホットパックなどで、そのあたりをじんわりと温める(温湿布)のも効果的です。リラックスした状態で、1回5〜10分程度行ってみてください。
(※ただし、急に強く痛み出した「急性期」の場合は、冷やした方が良い場合もあります。判断に迷ったら歯医者にご相談ください。)
3. 姿勢を正し、ストレスを上手に発散する
日中の「TCH」を防ぐためにも、良い姿勢を意識しましょう。
特にデスクワーク中は、猫背になったり、顎を突き出す姿勢になったりしがちです。
背筋を伸ばし、顎を軽く引くことを意識するだけでも、首や顎の筋肉への負担は変わります。
そして、ストレスは顎の大敵です。
浜松市には、浜名湖ガーデンパークや中田島砂丘など、自然に触れられる素敵な場所がたくさんあります。
お休みの日は少しデジタルデバイスから離れ、ゆっくり散歩をしたり、趣味の時間を持ったりして、心からリラックスできる時間を作ってくださいね。

【まとめ】浜松市で「顎が痛い」と感じたら、一人で悩まないで
この記事では、40代女性に多い「顎関節症」について、その原因からセルフチェック、歯医者での治療法(マウスピースなど)まで、詳しく解説してきました。
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顎関節症は「顎の痛み」「口が開かない」「音がなる」が主な症状
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40代女性は「TCH(食いしばり)」「ストレス」「姿勢」が原因になりやすい
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放置すると痛みが慢性化したり、口が開かなくなるリスクがある
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歯医者では主に「マウスピース」と「生活習慣指導」で治療する
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痛いときは安静にし、セルフマッサージや温めることも有効
「顎が痛い」「音がなる」といった症状は、体からの大切なSOSサインです。 「これくらい」と我慢してしまうのが、一番よくありません。
浜松市で顎関節症かもしれないとお悩みなら、まずは一度、専門家である歯医者にご相談ください。
その不調の原因を一緒に探し、あなたに合った解決策を見つけていきましょう。
青木歯科医院では、そうした顎のお悩みから、審美的なお悩みまで、患者さまお一人おひとりの声に耳を傾け、幅広くご相談を承っています。
あなたの笑顔と健康な毎日を取り戻すお手伝いをさせていただけたら幸いです。
執筆
青木歯科医院 院長 青木俊明
読者の皆様へ:この記事の医学的根拠について
この記事は、特定の単一の研究論文をご紹介するものではなく、現在の歯科医療において広く認められている標準的な知見に基づいて作成されています。
情報の正確性と信頼性を担保するため、主に以下の情報を参照し、ご理解しやすいよう、平易な言葉で解説するよう努めました。
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日本顎関節学会、日本顎咬合学会などの専門学会が定める診療ガイドライン
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日本歯科医師会や厚生労働省などの公的機関が発信する情報
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歯科大学などで用いられる標準的な医学教科書
記事で触れた「TCH(歯列接触癖)」の重要性や、主な治療法としてご紹介した「スプリント療法(マウスピース)」は、いずれも多くの専門医に支持されている、確立された考え方です。
顎の痛みや不調は、原因が様々で不安に感じられることも多いかと存じます。この記事が、皆様の不安を和らげ、一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

