こんにちは、浜松の青木歯科医院です。
今回は、近年注目を集めている**BLW(赤ちゃん主導の離乳食)**についてご紹介します。
従来の離乳食の進め方とは異なるユニークな方法で、赤ちゃんの成長を促しながら、家族みんなで食卓を囲む喜びを深めることができます。


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BLW(赤ちゃん主導の離乳食)とは?
BLWは「Baby-Led Weaning」の略で、日本語では「赤ちゃん主導の離乳食」と訳されます。
これは、赤ちゃん自身が食べたいものを、自分の手で選び、口に運んで食べる方法です。
スプーンで親が与えるのではなく、赤ちゃんが主体となって食事を進めるのが最大の特徴です。
この方法は、イギリスの助産師・保健師であるジル・ラプレイ氏によって提唱されました。
彼女の著書『Baby-Led Weaning』は2008年に初版が出版されて以来、現在までに20か国以上で翻訳され、世界中の多くのお母さんたちが実践しています。
BLWは、特定の「進め方」や「完了段階」があるメソッドというよりも、「赤ちゃん自身の意思を尊重し、赤ちゃん主導で食事を進めていく」という考え方が大切にされています。
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従来の離乳食とBLWの大きな違い
従来の離乳食とBLWでは、いくつかの点でアプローチが異なります。
• 主導権:
◦ 従来の離乳食では保護者が主導権を持ち、食べる量やペース、タイミングを決めます。
◦ 一方BLWでは、赤ちゃんが主導となり、食べたいものや量を自分で決めます。
• 視線:
◦ 従来の離乳食では、赤ちゃんの視線はスプーンで食べ物を運んでくれる保護者に向けられがちです。
◦ BLWでは、赤ちゃんは目の前にある食べ物に意識を集中し、食べ物自体を観察して自分で口に運びます。
• 親の役割:
◦ 従来の離乳食では、親は離乳食を作り、それを赤ちゃんに与えることが主な役割です。
◦ BLWでは、親は赤ちゃんの食事を用意し、一緒に食事をしながら、食べる姿を見せてあげることが大切です。


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BLWのメリット
BLWには、赤ちゃんにとっても親にとっても多くのメリットがあります。
1. 家族みんなで食卓が楽しめる
◦ 従来の離乳食では、赤ちゃんが一人ぼっちで食事をする形になりがちでしたが、BLWでは基本的に赤ちゃんも家族と一緒に食事をします。
◦ 家族の食事と赤ちゃんの食事が別々である必要がないため、親の準備負担も軽減されます。
2. 安全に食べることを学ぶ
◦ 赤ちゃんは食べ物を口に入れる前に、じっくり見て、触って、探求することができます。
◦ 自分で食べ物を噛んだり、口の中で移動させたりすることで、食べ物の扱い方を学びます。
◦ この経験を通じて、BLWで育った赤ちゃんは、従来の離乳食で育った赤ちゃんよりも窒息のリスクが低いという報告もあります。
3. 手と目の協調運動や指先の器用さが向上する
◦ 自分で食べ物をつかみ、口に運ぶ経験を繰り返すことで、これらのスキルが発達します。
4. 自信がつき、自尊心が生まれる
◦ 赤ちゃんは「これはどんな味だろう?どんな食感だろう?」と予測しながら実際に口に入れ、その結果を得るという経験を繰り返すことで、自分の能力と判断に自信をつけていきます。
5. 離乳食を作る時間を短縮できる
◦ BLWでは、赤ちゃんに特別な食事を用意する必要はほとんどありません。
◦ 家族が健康的な食事をしていれば、それを取り分けるだけで済むことが多いため、親の負担が大幅に減ります。
6. 赤ちゃんとの食事中の奮闘が減る
◦ 「しっかり栄養をとらせないと」というプレッシャーから、親が無理にスプーンを口に運ぶ必要がなくなります。
◦ 赤ちゃんがリラックスした状態で食事に向き合えるようになります。


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BLWの懸念点と対応
BLWを始めるにあたり、いくつか懸念される点もありますが、工夫次第で対応できます。
• 散らかること:
◦ 最初は食べ物を落としたり、握りつぶしたりするため、散らかるのは避けられません。
◦ しかし、BLWを実践した多くのお母さんたちは「最初は散らかるけれど、上手につかんで食べられるようになった!」と語っています。
◦ エプロンを使用したり、夏場は裸で食事をさせたりするなどの工夫が推奨されています。
• 食材が無駄になる:
◦ 口に入れても吐き出すことや、食べる量より多くの食べ物を破壊してしまうことがあります。
◦ これは食べ物と向き合う練習の大切な過程と考えられます。
◦ 最初は少し多めに準備し、完食を求める必要はありません。
• 周りの理解が得にくい:
◦ 日本ではまだBLWを取り入れている家庭が少ないため、「その方法で大丈夫なの?」と言われることもあるかもしれません。
◦ 実際に赤ちゃんが楽しそうに食べる姿を見せることで、周りの人も納得してくれるはずです。
• 栄養の偏り・鉄分不足:
◦ 離乳食開始当初は、メインの栄養は母乳やミルクから摂取するため、食べる量が少なくても心配はいりません。
◦ ただし、生後6ヶ月頃からお母さんからもらった鉄分の貯金が底をつき始めるため、積極的に鉄分を含む食べ物(レバー、卵黄、赤身の肉、貝類など)を取り入れることが推奨されています。
◦ 非ヘム鉄(ほうれん草など)はビタミンCや動物性たんぱく質と一緒に摂ると吸収率が上がります。
• 窒息(誤嚥)の心配:
◦ BLWを始める際に最も心配されることの一つですが、従来の離乳食と比べて窒息のリスクが高いわけではありません 。
◦ 赤ちゃんは、食べられないほど大きな食べ物を舌で押し出す「咽頭反射」という防御反応を持っています。これは生後6~7ヶ月の赤ちゃんに特に強く見られる正常な反応です。
◦ 窒息を防ぐための基本的な安全策として、以下の点に注意しましょう。
▪ まっすぐ座らせる
▪ 小さくて丸いものは与えない(例:プチトマトは半分に切る)
▪ 食事中は赤ちゃんを一人にしない
▪ 赤ちゃんの口に突然食べ物を入れない
◦ 避けるべき食べ物として、ハチミツ(1歳未満の赤ちゃんにはボツリヌス菌のリスクがあるため)、加熱が不十分な肉や魚、塩分や糖分が多く含まれるもの、繊維の多い野菜、小さくて硬いもの、丸くて小さいもの、皮付きのもの、粘着性のあるものなどが挙げられます。

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BLWを始める時期と食べ物
BLWの開始時期は、月齢だけでなく赤ちゃんの体の発達をよく見て判断することが大切です。
• 一般的な開始の目安は「まっすぐ座れる」ことです。腰がぐらぐらせず、一人でしっかり座れる状態が目安です。
• WHO(世界保健機関)は生後6ヶ月から補完食(離乳食)の開始を推奨しており、厚生労働省は生後5~6ヶ月を適当としていますが、これらはあくまで目安であり、個人の発達には差があります。
• 赤ちゃんが、テーブルに手を伸ばしたり、「食べたい」というサインを出したりする様子が見られたら、開始を検討しましょう。
どのような食べ物から提供したら良いか?
BLWでは、家族の食卓に赤ちゃんを迎え入れるという姿勢が基本です。家族が健康的な食事をしていれば、赤ちゃんにもそこから取り分けて与えることができます。
• 初期の食材(6~8か月頃):
◦ シンプルに切って煮たり蒸したりするだけの、素材本来の味を知ることができるものが良いでしょう。
◦ 手でつかみやすい長さ5~10センチ程度のスティック状の食べ物が推奨されています。
◦ 例えば、細長く切って煮たニンジン、ジャガイモ、スティック状のおにぎり、ハンバーグ、ブロッコリー、果物などが挙げられます。
◦ 赤ちゃんは握りつぶしながら食べるため、手のひらからはみ出るくらいの長さが良いとされています。
• 慣れてきたら(9~10か月頃):
◦ つるつるとした食べ物や柔らかく調理した肉、魚なども良いでしょう。
◦ アボカド、バナナ、手羽元や魚のムニエルなどが例として挙げられています。
• さらに慣れてきたら(9~12か月頃):
◦ 小さくつぶした食べ物も上手につかめるようになり、前歯でかじり取れるようになる時期でもあるため、あえて大きめにカットするのも良いです。
◦ トマト(プチトマトは半分に切る)、おにぎり、トースト(パン)、冷ややっこ、お味噌汁やスープ類、もずくなどが挙げられます。
• 12か月以降:
◦ スプーンやフォークを使いたがる赤ちゃんもいますが、手づかみがメインで構いません。
◦ 赤ちゃんは意思表示がはっきりし始め、食べたくないものは落としたり、「いらない」と親に意思表示するようになります。


食器・食具について
• BLWを始めたばかりの頃は、お皿やスプーンは特に気にせず、テーブルに直接食材を並べるだけで良いでしょう。
赤ちゃんは目の前の食べ物への興味が削がれることなく、食べ物への集中力が高まります。
赤ちゃんは目の前の食べ物への興味が削がれることなく、食べ物への集中力が高まります。
• お皿を使用する場合は、汁物やヨーグルトなどを提供する際や、キャラクターなどがないシンプルなものを選ぶと良いでしょう。
• 月齢が上がると、赤ちゃんは家族が使っているスプーンやフォークに興味を示し始めるので、赤ちゃんに合ったサイズのものを準備してあげると良いでしょう。
• 食事中の水分補給には、赤ちゃんが欲しがるときに飲めるよう、ストローマグやスパウトマグ、あるいは口のサイズに合った小さめのコップを用意しましょう。
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BLWは、赤ちゃんが生まれ持った「食べる力」を信じ、その環境を整えてあげること、そして赤ちゃんの意思を尊重して見守ることが何よりも大切です。
浜松の青木歯科医院は、BLWを通じて赤ちゃんの健やかな成長と、家族の楽しい食事の時間を応援しています。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。