なぜ遠藤航選手は「マウスピース」を着けて戦うのか?
浜松市は、サッカーやラグビー、野球、バスケットボール、そして柔道や空手などの武道まで、あらゆる年代でスポーツが非常に盛んな地域です。
日々の練習や試合で全力を尽くすアスリートの皆さん、そしてそれを見守る保護者の皆さんにとって、「怪我の予防」は最も重要な課題の一つではないでしょうか。
特に、激しい接触プレーで歯が折れたり、唇を切ったりする口腔内の怪我は、一度負ってしまうと取り返しがつきません。
この「万が一」の怪我を防ぐのが「スポーツ用マウスピース(マウスガード)」です。
しかし、「市販のもので十分」「息苦しいから着けたくない」という声をよく聞きます。
その考えを覆すのが、サッカー日本代表キャプテンであり、世界最高峰のプレミアリーグ(リバプールFC)で「デュエル(1対1の競り合い)」の強さを誇る、遠藤航選手の存在です。
彼はなぜ、装着が義務化されていないサッカーで、あえてマウスピースを着け続けるのでしょうか?
この記事では、遠藤選手も実践するスポーツ用マウスピースの真の力について、医学的根拠を交えながら徹底的に解説します。
1. 遠藤航選手がマウスピースに託す「3つの効果」
遠藤選手がマウスピース(カスタムメイド品)を装着する理由は、彼自身のインタビューなどから、大きく3つあることがわかります。
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パフォーマンスの向上(筋力・体幹) 彼が装着を始めた最大のきっかけは、ドイツ在籍時に出会った日本人歯科医師からの「良いマウスピースはパフォーマンスに違いを生み出す」という助言でした。精密なマウスピースで噛み合わせを安定させることで、食いしばった際に体幹が安定し、全身の筋力を最大限に発揮しやすくなります。彼の武器である「デュエル」の強さを、噛み締めの安定が支えているのです。
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外傷予防(プロテクション) サッカーは、ヘディングの競り合いや肘が顔面に入るなど、歯を失うリスクが非常に高いスポーツです。もちろん、歯科的な本来の目的である「怪我の予防」も、彼が装着を続ける大きな理由です。
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メンタル的な「スイッチ」 「ファイターのように見えるから」「戦うモードに入れる」と本人が語るように、マウスピースを装着する行為が、彼を試合に臨むアグレッシブな精神状態へと切り替える「ルーティン」の一部になっています。
重要なのは、彼が感じているこれらの効果、特に「パフォーマンス向上」や「違和感のなさ」は、歯科医院で精密に製作された「カスタムメイド品」だからこそ得られるものだという点です。
2. 市販品と歯科医院の「オーダーメイド」は、何が違うのか?
市販品(お湯で温めて自分で噛むタイプ)では、遠藤選手のような効果は期待できません。その決定的な違いは**「適合精度(フィット感)」**にあります。
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市販品(ボイル&バイトタイプ):
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自己流で噛んで成形するため、均一な厚みを保つことが非常に困難です。噛む力が強い奥歯は薄く(保護効果が低い)、前歯は分厚く(不快感が強い)なりがちです。
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お口全体に均等にフィットしないため、隙間ができて外れやすく、不快感が強いです。
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「息苦しい」「会話しづらい」「吐き気がする」といった不満の多くは、このフィットの悪さが原因です。
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歯科医院のカスタムメイド品:
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歯科医師が患者様お一人おひとりの歯型を精密に採得します。
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歯科技工士が、その歯型を用いて、競技の特性(衝撃の強さや方向)を考慮した適切な厚みと形態で製作します。
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歯列全体に吸い付くようにフィットするため、違和感が最小限で、外れにくいのが特徴です。
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装着したままの呼吸や会話、水分補給もスムーズに行えます。
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「とりあえず装着している」状態と、「お口を確実に保護し、パフォーマンスを支えている」状態は、全く別物なのです。
3. 【医学的根拠①】口腔顔面外傷(歯の破折・裂傷)に対する圧倒的な予防効果
マウスガードの最も重要かつ明確な効果は、歯と口腔内の怪我の予防です。
カスタムメイドのマウスガードは、外部からの衝撃が加わった際、そのエネルギーを吸収・分散させます。一点に集中しがちな衝撃をマウスガード全体で受け止め、歯や顎の骨へのダメージを最小限に抑えるのです(文献1)。
複数の研究を統合・分析した「システマティックレビュー(メタアナリシス)」という最も信頼性の高い研究手法の一つにおいて、マウスガードを装着していない選手は、装着している選手に比べて口腔顔面外傷(歯の破折、脱臼、唇の裂傷など)を負うリスクが1.6倍から2.33倍も高いことが一貫して報告されています(文献2, 3)。
浜松市内の部活動で多いバスケットボールやサッカー、柔道・空手などは、まさにこのリスクが非常に高いスポーツと言えます。
4. 【医学的根拠②】脳震盪(のうしんとう)予防への期待と最新の知見
「マウスガードは脳震盪を予防できるのか?」という問いは、長年議論されてきました。
従来、その直接的な予防効果については「科学的根拠は確立されていない(inconclusive)」とされてきました(文献4)。
しかし、近年の研究では新たな見解も示されています。2023年に発表された大規模なシステマティックレビュー(メタアナリシス)では、コンタクトスポーツ(衝突を伴うスポーツ)において、マウスガードの使用が脳震盪の発生率を約26%低減させる保護的な効果(protective effect)を持つ可能性が示唆されました(文献5)。
これは、下顎から顎関節、そして頭蓋底へと伝わる衝撃を、マウスガードが介在することで緩和・減衰させるためではないかと考えられています。
脳震盪を「完全に防ぐ」ものではありませんが、ヘディングやタックルが多いサッカーやラグビーにおいて、そのリスクを軽減する重要な役割を担う可能性が示され始めているのです。
5. 【医学的根拠③】スポーツパフォーマンスへの影響(遠藤選手の強さの秘密)
遠藤選手が実感している「パフォーマンス向上」にも、医学的な根拠があります。
人間が瞬間的に強い力を発揮する際、無意識に歯を強く食いしばります。このとき、顎の位置(噛み合わせ)が不安定だと、首や肩の筋肉に余計な緊張が生まれ、体幹のバランスが崩れやすくなります。
精密に作られたカスタムメイドのマウスガードは、顎を最も安定的かつ機能的な位置で保持することを助けます。この安定した噛み締め(クライテンション効果)が、体幹の安定性を高め、全身の筋力を効率よく発揮させる(筋力、バランス、柔軟性などを向上させる)可能性があると、複数の研究で期待されています(文献1, 6)。
市販品ではフィットが悪いため、逆にパフォーマンスの妨げになりますが、適切に製作されたカスタムメイド品であれば、少なくともパフォーマンスに悪影響を与えないことは多くの研究で一致しています(文献7)。
6. マウスピース装着が推奨されるスポーツ
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装着が義務化されている例: ラグビー、アメリカンフットボール、ボクシング、キックボクシング、ラクロス(女子)、インラインホッケー など
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装着が強く推奨される例:
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接触が多い: サッカー、バスケットボール、ハンドボール、柔道、空手、レスリング など
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用具・ボールが当たる危険性: 野球、ソフトボール、テニス、バレーボール、スキー、スノーボード など
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転倒の危険性: スケートボード、自転車競技(BMX) など
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浜松市内の中学校・高校の部活動、クラブチームで汗を流すお子様から、趣味でスポーツを楽しむ大人の方まで、上記に当てはまる場合は、ぜひ装着をご検討ください。



7. 青木歯科医院でのマウスピース製作の流れ
歯科医院でのマウスピース製作は、保険適用外(自費診療)となりますが、万が一、歯を失った場合の治療費(インプラントやブリッジなど)と比較すれば、非常に有効な「未来への投資」と言えます。
Step 1: カウンセリング・診査 まずはご相談ください。現在行っているスポーツの種類、使用頻度、お口の悩みなどを詳しく伺います。同時に、虫歯や歯周病がないかなど、お口の状態をチェックします。(※虫歯などがある場合は、先に治療が必要な場合があります)
Step 2: 歯型の採得(最も重要な工程) マウスピースを精密に製作するため、お口の型取り(印象採得)を行います。これがフィット感を左右する「設計図」となります。
Step 3: 製作 歯科技工所にて、患者様の歯型に合わせたオーダーメイドのマウスピースを製作します。競技特性に合わせて、厚みや色(透明、白、黒、チームカラーなど)を選択できる場合もあります。
Step 4: 試着・調整・お渡し 完成したマウスピースを実際にお口に装着していただき、フィット感や噛み合わせ、違和感がないかを確認します。必要に応じてその場で微調整を行い、最適化した状態でお渡しします。
Step 5: 定期メンテナンス マウスピースは消耗品です。使っているうちにすり減ったり、噛み合わせが変化したりすることがあります。また、成長期のお子様は歯並びや顎が変化します。定期的に歯科医院でチェックを受け、必要であれば調整・再製作することをおすすめします。
浜松市でスポーツ用マウスピースをご検討中の方へ
当院では、カウンセリングを行い、競技の特性やお口の状態に合わせた完全オーダーメイドのマウスピースを製作します。
市販品との違いを、ぜひ体感してください。 お子様の部活動から、プロを目指すアスリートの方まで、お気軽にご相談ください。

スポーツ用マウスピースに関する よくあるご質問
Q. 浜松市でスポーツ用マウスピースを作ると、費用はいくらくらいですか?
A. スポーツ(外傷予防)を目的としたマウスピースの製作は、保険適用外(自費診療)となります。 当院では、片顎〇〇,〇〇〇円(税込)から製作を承っております。競技の種類(衝撃の強弱)、必要な厚み、使用するシートの材質、色(クリア、単色、マルチカラー)などによって費用が異なります。まずはカウンセリング(相談無料)にて、ご希望や競技に合わせたお見積もりをご提示いたしますので、お気軽にご相談ください。
Q. 子供(小学生・中学生)でも作れますか?
A. はい、もちろん可能です。特に成長期のお子様(乳歯と永久歯が混在する時期や、顎が成長している時期)は、歯並びが変化しやすいため、市販品ではすぐに合わなくなってしまいます。 浜松市内の部活動(バスケ、サッカー、野球、柔道、空手など)での怪我予防のためにも、歯科医院での製作と定期的なチェックをおすすめします。成長に合わせて、短期間で作り直す必要がある場合もございます。
Q. 完成までにどのくらい時間がかかりますか?
A. 通常、初診時にカウンセリングと歯型を採得し、その後、約1週間〜10日程度でお渡しが可能です。 (※虫歯や歯周病の治療が必要な場合は、そちらの治療を優先する場合がございます) 試合の日程が迫っているなど、お急ぎの場合は可能な限り対応いたしますので、ご予約時にお申し付けください。
Q. 保険は適用されますか?
A. スポーツによる怪我の予防を目的としたマウスピース(マウスガード)の製作は、健康保険の適用外となり、自費診療となります。 (※なお、睡眠時無呼吸症H候群や顎関節症の「治療用」マウスピース(スプリント)については、診断に基づき保険適用となる場合がございます。目的が異なりますのでご注意ください)
Q. 市販品との一番の違いは「保護能力」ですか?
A. 「保護能力」も全く異なりますが、一番の違いは**「適合精度(フィット感)」**です。 歯科医院のカスタム品は、精密な歯型から作るため、お口に吸い付くようにフィットします。そのため、
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呼吸や会話を妨げない(パフォーマンスが落ちない)
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衝撃を受けた際にズレたり外れたりしない(確実に歯を守る) という、市販品にはない大きなメリットがあります。遠藤航選手が違和感なくプレーに集中できるのも、この適合精度の高さがあるためです。
Q. お手入れはどのようにすればよいですか?
A. 使用後は、水道水でよく洗い流してください。汚れが気になる場合は、柔らかい歯ブラシ(歯磨き粉は研磨剤が入っているため使用しないでください)で優しく磨くか、市販のマウスピース専用の洗浄剤をご使用ください。 熱湯消毒は変形の原因となりますので、絶対に避けてください。洗浄後は、よく乾燥させてから専用のケースで保管してください。
【まとめ】浜松市でスポーツを続けるために、最高の「お守り」を
市販のマウスピースは「安価」であること以外に、歯科医院のカスタムメイド品に勝る点はありません。
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医学的根拠に基づき、歯や口腔内の怪我のリスクを大幅に低減します。
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脳震盪のリスクを軽減する可能性が最新の研究で示唆されています。
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遠藤航選手のように、快適なフィット感で、呼吸や会話を妨げず、パフォーマンスの維持・向上に貢献します。
スポーツパフォーマンスの向上と、取り返しのつかない怪我の予防。その両方を実現するために、歯科医療の観点から作られた精密なマウスピースは、アスリートにとって最強の「お守り」です。
浜松市でスポーツ用マウスピースをご検討中の方、市販品に不満を感じている方、お子様の安全なスポーツ活動を願う保護者の方は、ぜひ一度、青木歯科医院までお気軽にご相談ください。あなた専用の「本物」のマウスピースを手に入れ、安心してプレーに集中しましょう。
【引用文献】
(文献1) Liu S, et al. Mouthguard types, properties and influence on performance in sport activities: a narrative review. Front Med (Lausanne). 2025;12:1527621. (文献2) Knapik JJ, et al. Effectiveness of Mouthguards for the Prevention of Orofacial Injuries and Concussions in Sports: Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2019;49(7):1087-1105. (文献3) Keall GW, et al. Risk of orofacial injury in sports: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2020;54(13):780-786. (文献4) Benson BW, et al. Do mouthguards prevent concussion? A systematic review of the literature. Br J Sports Med. 2009;43(8):582-5. (文献5) Emery CA, et al. Prevention strategies and modifiable risk factors for sport-related concussions and head impacts: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2023;57(13):828-838. (文献6) 日本スポーツ歯科医学会 編. スポーツ歯学 第4版. 医歯薬出版, 2018. (文献7) Faculty of Sport and Exercise Medicine UK (FSEM). Position Statement: Mouthguards for the prevention of oro-facial trauma in sport. 2021.
(注:引用文献は記事の信頼性を高めるために記載しています。)
【この記事の監修者】


