西山あおき歯科クリニック

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インプラント周囲炎を放置すると起きる骨の吸収と残せる段階での治療法

インプラント周囲炎を放置すると起きる骨の吸収と残せる段階での治療法

歯ぐきの腫れや出血に気づいたときの判断基準


インプラント周囲炎は強い痛みが乏しいまま顎の骨の吸収が進みやすいため、歯ぐきの出血や腫れ、膿に気づいた時点で受診を急ぐ必要があります1。痛くないからと様子を見ているうちに支えの骨が減り、インプラントの動揺や脱落につながる恐れがあるからです1。この記事では、放置した場合に骨の吸収がどう進むのか、症状別の受診の優先度を整理します。あわせて、歯科用CTなどによる検査とインプラントを残せる段階での治療法、中断していた定期管理を再開するときの確認事項もお伝えします。


この記事の要点まとめ


  • インプラント周囲炎は痛みが乏しくても骨吸収が進むことがあり、出血・腫れ・膿に気づいたら歯科医院へ相談します。
  • 検査で骨の状態を確認し、進行度に応じて清掃や外科処置、インプラントの撤去などを検討します。
  • 定期管理を再開するときは症状や持病、服薬状況、通院できる予定を伝え、検査と日常ケアを続けます。


インプラント周囲炎を放置すると骨の吸収はどう進むのか


インプラント周囲の汚れをそのままにしておくと、歯ぐき(粘膜)の炎症から始まり、やがてインプラントを支える顎の骨(歯槽骨)が少しずつ溶けていきます1。骨の吸収が進むと元の高さに戻すことは難しくなるため、どの段階で気づけるかがその後の経過を左右します。


インプラント周囲粘膜炎と周囲炎の分かれ目は炎症が骨に届いているかどうか


炎症が歯ぐき(粘膜)だけにとどまっている段階をインプラント周囲粘膜炎、その炎症がインプラントを支える歯槽骨にまで広がった段階をインプラント周囲炎と呼びます1。この2つの大きな分かれ目は、骨の減少が始まっているかどうかです1。


粘膜炎の段階であれば、原因となっている歯垢(プラーク)や歯石を取り除き、毎日の清掃方法を見直すことで、歯ぐきの腫れや出血が落ち着くケースも少なくありません1。一方で、インプラント周囲炎へ進んで骨の吸収が始まると、自然に骨が元通りになることは見込めず、処置も複雑になっていきます。


「痛くないから軽い」は誤解 天然歯と異なる進み方


「強い痛みがないから、まだ軽い段階だろう」と考えるのは注意が必要です。インプラントの周りには、ご自身の歯(天然歯)にある歯根膜(歯と骨をつなぎ、噛む力や違和感を受け止める薄い膜)が存在しません。そのため、細菌による炎症が起きても初期には痛みや噛んだときの違和感として自覚しにくく、気づかないうちに深部へ広がりやすいという特徴があります。


天然歯の歯周病とは組織のつくりや進み方が異なり、痛みよりも先に「歯磨き時の出血」「歯ぐきの赤みや腫れ」「膿が出る(排膿)」といった変化が現れます1。痛みの強さだけでは、骨がどれくらい減っているかを測ることはできません。


骨が減った先に起こるインプラントの動揺・脱落と周りの歯への影響


治療をせずに放置して骨の吸収がさらに進むと、インプラント体を支える土台が失われ、最終的にぐらつき(動揺)や脱落につながることがあります1。インプラントは骨と直接結合して力を支えているため、周囲の骨がかなり減るまで揺れが出にくく、ぐらつきを感じた時点では骨吸収が広く進んでいるケースもみられます。


また、慢性的な炎症や増えた細菌はインプラント1本だけの問題にとどまりません。隣り合う天然歯の歯周病を悪化させたり、強い口臭や噛み合わせの偏りを招いたりすることもあります。お口は身体の健康への入口であり、噛める機能を守り続けるためにも、小さな変化の段階で状態を確かめておくことが大切です。


ポイント

インプラント周囲炎は痛みが乏しいまま骨の吸収が進みやすいため、出血や腫れに気づいた段階での確認がインプラントを守る分かれ目になります1。


出血・腫れ・膿・ぐらつき 症状別に受診を急ぐ目安と繰り返す理由

出血・腫れ・膿・ぐらつき 症状別に受診を急ぐ目安と繰り返す理由

インプラント周囲の症状は、出血だけの段階から、膿やぐらつきを伴う段階まで幅があります。お仕事やご家族の予定と照らし合わせながら、どの程度受診を急ぐべきかを判断する目安を整理しました。


歯磨きでの出血だけ/腫れと膿がある/ぐらつく 段階ごとの受診の優先度


現在の症状から受診の優先度を考える際は、次の3つの段階が目安になります。


症状の段階見られやすい変化受診を急ぐ目安
第1段階歯磨きやフロスを通したときに血がにじむ、歯ぐきが少し赤い次の休日などを待って長期間先延ばしにせず、早めに予約を取る
第2段階歯ぐきがぷっくり腫れている、押すと白い膿が出る、口臭やネバつきが強まった骨の吸収が進んでいる可能性があるため、数日のうちに歯科医院へ連絡し受診日を相談する
第3段階インプラント自体がぐらつく、噛むと痛む、頬や顎まで腫れている、熱っぽさがある支えの骨が大きく減っているか急性の炎症が疑われるため、できるだけ早く連絡して指示を仰ぐ

これらはあくまで一般的な目安です。上部の被せ物(上部構造)が緩んでいるだけでもぐらつきを感じることはありますが、自己判断で様子を見続けると処置の選択肢が狭まることがあります。迷ったときは、お電話で今の症状を伝えて受診の時期を相談してみてください。


受診までの数日間にしてよいこと・避けたいこと


受診日までの数日間は、患部に余計な負担をかけない過ごし方を心がけましょう。血が出るからといって歯磨きを完全にやめてしまうと、細菌の塊である歯垢が増えて炎症がさらに強まります。やわらかめの歯ブラシを使い、毛先を優しく当てて周囲の汚れを落とすケアは続けてください。


反対に、指や爪楊枝で歯ぐきを押して膿を出そうとする行為や、硬い毛の歯ブラシで強くこする行為は、傷ついた組織をさらに痛めるため避けましょう。また、以前に処方された抗菌薬や痛み止め、ご家族のお薬を自己判断で飲むのも控えてください。食事の際は反対側の歯で噛むようにし、血行が良くなって腫れや拍動痛が出やすくなる飲酒や、歯ぐきの血流を妨げる喫煙は控えておきましょう。なお、これらの対応は受診までのつなぎであり、炎症そのものを治すものではありません。


インプラント周囲炎が治りにくい・繰り返す理由


「一度クリーニングを受けたのに、また腫れてきた」というように、インプラント周囲炎が治りにくい・繰り返しやすい背景には複数の要因が関わっています。定期管理に通い続けている人は、通院が途切れがちな人よりもインプラント周りの病気が起こりにくいと報告されています2。糖尿病の方でも、血糖がよく整っている人は周囲炎になりにくく、骨の減りも小さいとされています2。


このほか、喫煙習慣や歯周病の既往、歯ぎしりや食いしばりによる強い力も関わると考えられています。さらに、被せ物の形や設計はインプラント周りの健康に大きく関わり、周りの骨がどのくらい減るかにも影響することが研究で整理されています3。表面の汚れを一度落としただけでは、こうした背景要因が残っている限り再び炎症が起きやすいため、原因を一つずつ整理して管理していく姿勢が求められます2。


インプラントを残せるかを見極める検査と、進行度に応じた治療法

インプラントを残せるかを見極める検査と、進行度に応じた治療法

インプラントを残して使い続けられるかどうかは、目に見える歯ぐきの状態だけでなく、内部の骨がどの程度保たれているかを数値と画像で確かめて判断します1。検査から治療方針を決めるまでの一般的な流れを見ていきましょう。


ポケットの深さ・出血や膿・歯科用CTの画像で骨の減り方を確かめる


診察ではまず、インプラントと歯ぐきのすき間(ポケット)の深さを専用の器具で測り、その際に出血や膿が出るか、インプラントに揺れがないかを確認します1。あわせてレントゲン撮影や、必要に応じて歯科用CTによる立体的な画像検査を行い、インプラント周囲の骨の高さや減り方を詳しく調べます。


このとき大きな手がかりになるのが、過去の定期管理で記録されたポケットの数値やレントゲン画像と照らし合わせることです。以前と照らし合わせてどのくらいの期間でどれほど骨が変化したかがわかると、進行の速さや今後の見通しを立てやすくなります。しばらく足が遠のいていた場合でも、過去に管理を受けていた歯科医院へ相談することにはこうした利点があります。


保存を目指す段階の処置:清掃・消毒から外科的な処置まで


検査の結果、インプラントの保存を目指せると判断された場合は、段階的に処置を組み合わせます。どの処置を選ぶかは、ポケットの深さや骨吸収の程度によって変わります。


炎症が浅いときや、骨のへり方が軽いときは、専用の器具でインプラントの表面やポケットの中のバイオフィルム(細菌の膜)や歯石を取りのぞく非外科的治療が中心です。そうじや消毒、噛み合わせの調整、みがきにくい被せ物の形の手直しなどを、あわせて行うこともあります。


近年では、通常の清掃処置に、光と薬剤を使う殺菌法(抗菌的光線力学療法)を加える方法も研究されています。ただし、清掃だけの場合よりも状態がよくなるかどうかは、まだはっきりしていません4。


非外科的な処置だけではポケットの奥の汚れを取りきれない中等度以上の骨吸収では、外科的治療が検討されます。麻酔をして歯ぐきを切り開き、インプラントの表面を出したうえで、洗い流しや消毒、器具での清掃によって細菌や感染した部分を取り除きます。骨の欠損の形によっては骨を補う処置を併用する場合もありますが、すべてのケースで骨が回復するわけではありません。


撤去を検討する状態と、その後に再埋入を考えられる条件


一方で、次のような場合には、周囲の骨や隣の歯を守るためにインプラントの撤去(除去)が選択肢に入ります。インプラント自体がすでに大きく揺れている場合、骨の吸収がインプラントの長さの大半に及んでいる場合、処置を重ねても排膿や強い炎症が治まらない場合です。


撤去を行った後は、まず歯ぐきと骨の傷が落ち着くのを待ちます。その後、残っている骨の量や厚み、糖尿病や喫煙といったリスク要因の管理状況、お口全体の噛み合わせを確認します。そのうえで、骨を増やす処置を伴う再埋入にするか、ブリッジ・入れ歯といった別の方法で噛む機能を補うかを担当医と相談して決めていきます。


どの方法が適しているかや必要な期間は個々の骨の状態によって大きく異なるため、検査結果をもとに説明を受けることが第一歩です。


ポイント

骨がどのくらい残っているか、どこまで進んでいるかを検査で調べると、そうじ中心の処置で残せるのか、外科の処置やインプラントの撤去(抜き取ること)を考えるのかが見えてきます。


定期管理を中断していた方が相談を再開するときに確認したいこと


お仕事やご家族の介護・送迎などが重なり、定期管理が半年、1年と途絶えてしまうことは珍しいことではありません。「中断していたことを指摘されるのではないか」と連絡をためらう方もいらっしゃいます。ですが、歯科医院にとって大切なのは過去の空白期間ではなく、今の状態をきちんと把握してこれからどう守るかを一緒に考えることです。


予約の連絡で伝えておきたい症状・中断期間・持病や服薬


予約のお電話やWEB連絡をする際は、次の点を簡単に伝えていただくと、当日の検査の準備や受診時期の調整がスムーズに進みます。


  • いつから、どのような症状があるか(歯みがきのときに血が出る、歯ぐきがはれる、膿が出る、噛んだときにいつもと違う感じがある、ぐらつくなど)
  • インプラントを入れたおおよその時期と、最後に定期管理を受けてからの期間
  • いま治療しているご病気や飲んでいるお薬、生活習慣(糖尿病や高血圧、骨粗しょう症などのお薬、たばこを吸うかどうかなど)

強い腫れや膿、痛みがある場合はその旨を最初に伝えると、予約枠の優先度を含めて相談しやすくなります。


仕事や家族の送迎と通院を両立させるために


受診を再開するにあたっては、治療がどのような流れで進み、何回くらい通うことになるのかも見通しを持っておきたい点です。一般的には、初回の受診でポケット検査や画像検査と応急的な清掃・消毒を行い、結果をもとに治療計画を相談します。軽度の清掃処置であれば数回の通院で定期管理へ移行できることもありますが、外科的な処置や被せ物の調整・撤去が必要になる場合は、数か月にわたる通院や経過観察が必要になることもあります。


費用は、行う検査や処置の中身(クリーニング、外科の処置、インプラントの撤去や再治療など)によって、保険が使える範囲と自由診療(保険が使えない診療)になる範囲が分かれます。複数の医療機関の公開情報をもとにした一般的な目安では、自由診療でのインプラント周りの消炎・そうじは数千〜数万円ほどです。外科的なそうじや骨を補う処置を伴うときは、数万〜十数万円ほどとされます。


撤去のあとにインプラント1本を入れ直すときは30万〜45万円ほどで、骨を増やす処置を併せるとさらに数万〜十数万円ほど加わることがあります。ここで挙げた金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用や期間・回数は医療機関やお口の状態により異なり、診察のうえでのご案内となります。


なお、外科的な処置やインプラントの入れ直しでは、処置のあとに痛みや腫れ、出血が出ることがあります。また、処置で炎症が落ち着いても、毎日のケアや定期管理が途切れると周囲炎がまた起こることがあります。


お仕事のシフト調整やご家族の送迎の合間に、通院の時間をつくる方も多くいらっしゃいます。当院は土曜日も診療しており、敷地内に8台分の駐車場があります。無理なく通えるペースを最初に伝えて相談しておくことが、途中で通院が途切れないための工夫になります。


再発を防ぐ日常ケアと、同じ衛生士が小さな変化を見守る定期管理


処置によって歯ぐきの腫れや膿が落ち着いた後も、インプラント周囲炎は再発しやすい性質を持っています。治す前に防ぐ習慣をつくるには、被せ物の根元の形に合った歯間ブラシやタフトブラシの使い方を身につけることが大切です。あわせて、禁煙や血糖値の管理など、ご自身のリスク要因に合わせた取り組みを続けることが予防につながります。


そして、ご家庭では落としきれないポケット内部の汚れを数か月ごとに取り除き、噛み合わせや歯ぐきのわずかな変化を確認するのが定期管理の役割です2。毎回同じ歯科衛生士が担当して継続的に拝見する体制や、位相差顕微鏡・歯科用CTなどで状態を視覚的に確かめる仕組みを活用しながら、生活のリズムに組み込める間隔で管理を続けていきましょう。まずは今の出血や腫れの状態を確かめるために、一度ご連絡ください。


ポイント

通院の中断を気にして先延ばしにするより、現在の症状と通えるスケジュールを伝えて検査を受け、残せる段階での対応を始めることが大切です。


よくある質問


Q. インプラント周囲炎になる確率はどのくらいですか?


A. インプラント周囲炎が起こる割合は、調べた人の集まりや診断のしかたによって報告ごとに幅があり、一つの数字で示すことはできません。インプラント周囲の粘膜の炎症(インプラント周囲粘膜炎)や、骨の吸収を伴うインプラント周囲炎は、ご自身のセルフケアの状況や全身状態、お口の環境などによって起こりやすさが変わります。特に歯周病の既往がある方や喫煙習慣のある方、定期的なメンテナンスを受けていない方では発症リスクが高まることが指摘されているため、入れた後の継続的な管理が欠かせません2。


Q. 智歯周囲炎(親知らずの周りの炎症)を1週間放置するとどうなりますか?


A. 親知らずの周りの歯ぐきが腫れる智歯周囲炎と、インプラント周囲炎は別の病気ですが、どちらも放置すると炎症が広がる点では注意が必要です。智歯周囲炎をそのままにすると、顎の周囲や喉の近くまで腫れと痛みが広がり、口が開けにくくなったり、飲み込むときに痛んだり、発熱を伴ったりすることがあります。一方、インプラント周囲炎は1週間放置しても強い痛みが出にくい代わりに、気づかないまま骨の吸収がじわじわと進むという違いがあります1。


Q. インプラント周囲炎になったらどうすればいいですか?


A. ご自身で膿を押し出したり市販薬だけで様子を見たりせず、まずは歯科医院へ連絡してポケットの深さや骨の状態を調べる検査を受けてください1。受診までの間は、やわらかい歯ブラシで患部を優しく磨き、喫煙や飲酒、その歯で硬いものを噛むことを控えて過ごします。インプラントを入れた歯科医院へ相談するのが基本ですが、転居などで難しい場合は、インプラントのメーカーや治療時期がわかる資料を持参して対応可能な歯科医院へご相談ください。


参考文献


1. インプラントの歯周病「インプラント周囲炎」について日本歯周病学会が解説します! | 歯周病のことがよくわかる「ペリオブック」|日本歯周病学会監修 https://periobook.perio.jp/periodontal-knowledge/501/

2. Carra MC, Blanc-Sylvestre N, Courtet A et al. Primordial and primary prevention of peri-implant diseases: A systematic review and meta-analysis. Journal of clinical periodontology. 2023. PMID: 36807599 / DOI: 10.1111/jcpe.13790

3. Lin GH, Lee E, Barootchi S et al. The influence of prosthetic designs on peri-implant bone loss: An AO/AAP systematic review and meta-analysis. Journal of periodontology. 2025. PMID: 40489290 / DOI: 10.1002/JPER.24-0144

4. Jervøe-Storm PM, Bunke J, Worthington HV et al. Adjunctive antimicrobial photodynamic therapy for treating periodontal and peri-implant diseases. The Cochrane database of systematic reviews. 2024. PMID: 38994711 / DOI: 10.1002/14651858.CD011778.pub2


青木 俊明

歯科医師


青木歯科医院

院長

青木 俊明

▶ 監修者プロフィール

経歴
昭和62年 朝日大学歯学部 卒業
平成6年 青木歯科医院 開業
平成24年 日本大学にて歯学博士取得(口腔病理学 専攻)
資格・所属学会
歯学博士
南カリフォルニア大学歯学部 研究員
インプラントセーフティーマーク認定歯科医師