西山あおき歯科クリニック

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糖尿病がある場合のインプラント治療で大切な血糖管理と手術前後の注意点

糖尿病がある場合のインプラント治療で大切な血糖管理と手術前後の注意点

糖尿病があってもインプラント治療を検討できる条件とは


糖尿病があっても、インプラント治療が必ずできないわけではありません。血糖の移り変わりや合併症があるかどうか、飲んでいる薬、お口全体のようすを主治医と歯科医師が確かめて、進め方を決めます。 治療を前向きに考えたい一方で、「糖尿病を理由に断られるのでは」「手術のあとに食事がとれず、血糖が乱れるのでは」と心配な方もいらっしゃるでしょう。


この記事では、HbA1cの数字だけでは決まらない考え方の目安をお伝えします。また、交替勤務などで食事の時間がばらばらなとき、手術の前とあとで薬をどう確かめるかもまとめました。さらに、ブリッジや入れ歯とのちがいも整理し、ご自分の暮らしに合う方法を相談するための材料にしています。


この記事の要点まとめ


  • 糖尿病があっても、すぐに治療ができないと決まるわけではありません。HbA1cのうつり変わりや合併症、お口のようすを見ながら相談します。
  • 手術の前とあとの食事や薬は、自分で変えないでください。交替勤務の予定もふくめて、主治医と歯科医師に確かめます。
  • インプラント・ブリッジ・入れ歯のちがいや通う手間を知り、治療のあとの手入れと、決まった間かくで通うことも考えて選びます。


糖尿病でインプラントを考えるときの注意点と、手術を進める前に確かめること

糖尿病でインプラントを考えるときの注意点と、手術を進める前に確かめること

治療方法は、血糖の状態とお口全体、これからの生活を踏まえて相談する


インプラントを検討するときは、「入れられるかどうか」だけでなく、残っている歯を守りながら将来にわたって噛める状態を保てるかを軸に考えます。


「糖尿病があると断られるのでは」「まずは失った奥歯さえ入ればいい」とお考えになるかもしれません。しかし、目先の噛みにくさや見た目だけでなく、噛み合わせや全身の健康面にも目を向ける必要があります。当院では、お口全体のバランスを考え、患者さまへの説明と対話を通じて将来を見据えたケアを提案しています。


血糖の数値や失った歯の場所だけでなく、残っている歯の支え、さらには交替勤務による食事時間のずれや通院の負担まで含めて整理します。インプラントありきで話を進めるのではなく、ブリッジや部分入れ歯も含めて、これからの生活に無理のない方法を一緒に考えていきます。


HbA1cの数値だけで決まらない、手術を進める・延期する判断と主治医に伝えたい情報


手術を進められるかどうかの判断は、直近のHbA1cの数値一つだけで決まるわけではなく、過去の推移や合併症、お口の状態を合わせて個別に評価されます。


手術を行うときに血糖値が高すぎると、手術後の傷が治りにくく細菌感染しやすくなることがあるため、事前に血糖値を整える治療を行います1。また、糖尿病はインプラント周囲の粘膜や骨に炎症が起きる「インプラント周囲疾患」のリスク要因の一つとして研究されています2。そのため、状態によっては手術を一度延期し、内科での血糖管理を優先して再評価の機会を設けることがあります。延期は「治療を断られた」ということではなく、体を守るためのステップです。


内科の主治医と歯科医師が連携して判断できるよう、相談時には次の情報を共有できるようにしておくと話がスムーズに進みます。


  • 血糖の記録:さいきんの分だけでなく、ここ数か月のHbA1cや血糖のうつり変わりがわかる検査の結果
  • 薬と治療のようす:いま飲んでいる薬や、使っている注射の薬がわかるお薬手帳
  • 合併症があるか:腎臓や血管、神経などについて、主治医から言われていること
  • 暮らしと働き方のリズム:夜勤や交替勤務があるか、日によってずれる食事の時間

交替勤務で食事がずれる人が、手術前後に確認しておきたい服薬と低血糖への備え


手術の当日やその後数日間は、麻酔や傷口への配慮から食事量が減ったり、やわらかい食事が中心になったりすることがあります。そのため、食事の量や時間が変わるときに糖尿病の薬をどう飲むかは、自己判断で変えたり中断したりせず、事前に主治医と歯科医師の双方へ確認しておく必要があります。


普段どおりの薬を飲んだ状態で食事量が減ると、低血糖を起こすおそれがあります。一方で、傷の治りや感染予防の観点からは血糖値を整えておくことが求められます1。交替勤務で日によって食事や睡眠の時間がずれる方は、あらかじめ主治医に相談して指示を受けておきましょう。たとえば「夜勤明けの手術を避けるか」「手術前後のシフトでいつ食事をとり、いつ薬を飲むか」「血糖をはかる時間や低血糖のときの補食をどうするか」を確かめておきます。


また、歯科での手術後に感染予防として抗菌薬(抗生物質)が処方された場合は、指示された日数と量を守って飲み切ってください3。もし自宅に以前処方された抗菌薬が残っていても、自己判断で飲むことは避けましょう3。


歯科用CTなどの設備と、相談時に確認したい検査・手術の進め方


顎の骨の厚みや神経・血管の位置を立体的に把握するため、事前の検査では画像診断が役立ちます。当院では、歯科用CTと外科処置に対応した専用オペ室を備えています。一般的には、歯科用CTの撮影では鮮明な画像を撮るために、数秒から十数秒ほど頭を動かさないよう案内があり、姿勢についてもその場で説明があります。


なお、具体的な検査手順や手術中の管理体制は医療機関ごとに異なります。初回の相談時には、次のような項目を歯科医師へ確認しておくと見通しを立てやすくなります。


  • 歯科用CTで見ること:骨の幅や高さ、まわりの歯や歯ぐきのようす
  • 手術中の体の見守り:血圧や脈、血液中の酸素の量などを見るモニター(バイタルモニター)を使うかどうか
  • 手術をのばすときの予定:血糖を整えるために手術の時期をずらすとき、仮歯や噛み合わせをどうするか

ポイント

手術の可否や時期はHbA1cの数値だけで決まるものではありません。お薬手帳や検査結果を持参し、交替勤務のシフトや食事の変化も含めて主治医・歯科医師と事前にすり合わせておきましょう。


インプラント・ブリッジ・入れ歯を、残る歯を守り噛める状態を長く保つ視点で選ぶ

インプラント・ブリッジ・入れ歯を、残る歯を守り噛める状態を長く保つ視点で選ぶ

失った歯を補う方法と、残っている歯を守る方法を一緒に考える


奥歯を失った際の方法を選ぶときは、欠損した部分をどう補うかだけでなく、隣り合う歯や残っている他の歯にどれくらい負担がかかるかを同時に考えることが重要です。


当院では、むし歯治療においてできる限り削らず、歯を残すことを優先しています。初期むし歯については、ダイアグノデントという機器で数値を確かめたうえで、経過観察による管理も選択肢として示しています。また、カリエスチェッカーでの染め分けや拡大鏡(エルゴルーペ)を用いて、健康な歯質を守るよう努めています。


この「残っている歯を大切にする」という視点は、失った歯を補う方法を選ぶ場面でも変わりません。


たとえばブリッジは固定式で違和感が少ない反面、両隣の歯を削って支えにする必要があります。部分入れ歯は大きく歯を削らずに済みますが、金具(ばね)をかける歯に揺さぶられるような負担がかかることがあります。インプラントは周囲の健康な歯を削らずに独立して支えを作れますが、外科処置が必要であり、顎の骨と結合するまでの治癒期間を待つ必要があります。


働きながら通う場合の、通院期間・費用の内訳・手入れの違い


働きながら治療を続けるには、治療期間や通院回数、費用の内訳、そして治療後の手入れの違いを比べておく必要があります。インプラントは顎の骨に埋め込んだ後、骨と結合するまで約3か月〜6か月間待つ治癒期間が必要です4。また、喫煙習慣がある場合は粘膜の血流が悪くなり、傷や骨の治癒が遅れることがあるため禁煙を含めた確認が求められます5。


複数の医療機関の公開情報などを参考にした一般的な目安として、3つの治療法の違いを整理しました。


確認項目インプラント(自由診療)ブリッジ(自費素材の場合)部分入れ歯(自費素材の場合)
費用の相場(目安)1本あたり30万〜45万円程度(骨を増やす処置が加わるとプラス数万〜十数万円程度)3歯分で30万〜60万円程度(保険適用の素材を選べる条件もあり)20万〜50万円程度(保険適用の素材を選べる条件もあり)
治療期間・通院回数3〜6か月程度・5〜6回程度(骨の処置や血糖管理の延期で延びる場合あり)1〜2か月程度・3〜5回程度1〜3か月程度・4〜6回程度
費用の内訳で確認したい点事前検査・CT撮影、手術、仮歯、人工歯(上部構造)、術後のメンテナンス費土台の処置、型取り、仮歯、被せ物本体、装着後の定期管理費型取り、噛み合わせの確認、入れ歯本体、装着後の調整・管理費
毎日の手入れと管理丁寧な歯みがきと歯間清掃、定期的な専門清掃橋渡しの下を通す特殊なフロスでの清掃、定期検診毎食後の取り外し洗浄、専用洗浄剤の使用、バネをかける歯の清掃

ここで挙げた金額・期間・回数は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用や期間・回数は医療機関やお口の状態により異なり、診察のうえでのご案内となります。 なお、インプラントや自費の被せ物・入れ歯は公的医療保険が適用されない自由診療です。インプラント手術では、下あごの神経が傷ついて起こるしびれ、上あごの空洞(上顎洞)にインプラントが入り込むことやその炎症、インプラント周囲炎、思わぬ出血などが起こることがあります6。


当院は敷地内に8台分の駐車場があり、車でも通っていただけます。シフトの回り方や通いやすい時間を、はじめの相談のときに伝えてください。予約の取り方や治療の進め方を先に話しておくと、予定を立てやすくなります。


手術後だけでなく、その先も続けられる食事・清掃・通院を考える


どの治療法を選んだとしても、人工の歯が入ったら終わりではありません。治療の選択段階から、手術後や装着後にご自身の生活リズムの中で食事・毎日の歯みがき・定期的な通院を無理なく続けられるかを見極めておく必要があります。


当院では、痛みが出たときの処置だけでなく、噛める機能を将来にわたり守ることを診療理念としています。“治す前に防ぐ”習慣を大切にし、定期メンテナンスでは患者さまの生活習慣やリスクに応じた助言も行っています。


特にインプラント周囲炎には、歯周病や糖尿病、喫煙、飲酒が関わることが報告されています2。そのため、血糖の管理や毎日の清掃(プラークコントロール)を続けることが大切です。また、お口の炎症である歯周病と糖代謝は互いに影響し合うため、当院では位相差顕微鏡でお口の中の細菌の状態を画面で確認していただきながら、清潔な状態を保つお手伝いをしています。


毎回同じ衛生士に、お口や生活の変化を相談する


長くお口の健康を保つには、治療のあとのちょっとした気になることや、暮らしの変化を気がねなく話せる場があることが大切です。当院では、個室・半個室の診療室を用意しています。歯科衛生士は毎回同じ人が担当し、小さな変化に気づきやすくしています。


「交替勤務のシフトが変わって歯みがきの時間が取りにくくなった」「最近、内科で血糖値の変動を指摘された」「噛み合わせや歯ぐきに少し違和感がある」といったことも相談できます。毎回同じ歯科衛生士なので、前回の状態と見比べながら話を聞くことができます。私たちは、「歯医者は苦手だけど、ここなら行きたい」と感じていただける場所を目指し、麻酔時の表面麻酔や細い注射針、電動麻酔器の使用など痛みに配慮したやさしい診療を心がけています。


まずは治療法を一つに決め切る前に、直近の検査結果とお薬手帳、普段の勤務や食事のスケジュールをお持ちのうえ、現在のお口の状態と選択肢を確かめることから始めてみてください。


ポイント

費用や治療期間だけでなく、「残りの歯を守れるか」「交替勤務を続けながら日々の手入れと定期通院を維持できるか」を基準に選び、同じ担当衛生士と長く付き合える体制を活用しましょう。


よくある質問


Q. 糖尿病患者がインプラント治療を受けるリスクは何ですか?


A. 血糖値が高い状態が続いていると、手術後の傷が治りにくくなったり、細菌感染を起こしやすくなったりするリスクがあります1。また、治療後にインプラント周囲の歯ぐきや骨に炎症(インプラント周囲炎)が起きるリスク要因になることも指摘されています。そのため、事前の血糖管理と治療後の継続的な清掃・メンテナンスが求められます7。


Q. HbA1cが高い場合、抜歯や手術は可能ですか?


A. HbA1cの特定の数値だけで一律に決まるわけではなく、過去の推移や合併症の有無、服薬状況、お口の炎症の程度などを踏まえて内科の主治医と歯科医師が連携して判断します。血糖値が高すぎると傷の治りの遅れや感染につながるため、緊急でない抜歯やインプラント手術は、先に内科で血糖値を整える治療を行ってから進める場合があります1。


Q. ヘモグロビンA1cが10%以上の場合、入院する必要がありますか?


A. HbA1cが高いだけで、必ず入院になるとは限りません。多くは外来で、血糖を整える治療から始まります。入院が必要かどうかは、全身の状態や合併症の有無などを見て医師が判断します。


ただし、のどの渇きや尿の回数が増える、強いだるさがあるなど、高血糖の症状が強いときは早めに内科を受診してください。歯科の外科処置は、この段階では延期して血糖の管理を優先することが多いです。


Q. 糖尿病で歯科医院に行くとき、何に気をつければ良いですか?


A. 初診や相談の際には、現在服用している薬がわかる「お薬手帳」と、直近および過去の「血糖値・HbA1cの検査結果」を持参してください。また、交替勤務などで食事の時間が不規則な場合や、低血糖を起こした経験がある場合は、予約の時間帯や処置前後の食事・服薬のタイミングを配慮できるよう、あらかじめ歯科医師やスタッフへ伝えておくことが大切です。


参考文献


1. 糖尿病とがん、2つの治療をされる方へ | 糖尿病情報センター https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/070/080/01.html

2. Galarraga-Vinueza ME, Pagni S, Finkelman M et al. Prevalence, incidence, systemic, behavioral, and patient-related risk factors and indicators for peri-implant diseases: An AO/AAP systematic review and meta-analysis. Journal of periodontology. 2025. PMID: 40489307 / DOI: 10.1002/JPER.24-0154

3. 抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が拡大!一人ひとりができることは? | 政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/article/201611/entry-10538.html

4. インプラント歯科|昭和医科大学歯科病院 https://www.showa-u.ac.jp/SUHD/department/list/implant/

5. インプラント – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020 https://www.jda.or.jp/park/lose/index19.html

6. より安全な口腔インプラント手術 | KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト. https://kompas.hosp.keio.ac.jp/presentation/201402/

7. Carra MC, Blanc-Sylvestre N, Courtet A et al. Primordial and primary prevention of peri-implant diseases: A systematic review and meta-analysis. Journal of clinical periodontology. 2023. PMID: 36807599 / DOI: 10.1111/jcpe.13790


青木 俊明

歯科医師


青木歯科医院

院長

青木 俊明

▶ 監修者プロフィール

経歴
昭和62年 朝日大学歯学部 卒業
平成6年 青木歯科医院 開業
平成24年 日本大学にて歯学博士取得(口腔病理学 専攻)
資格・所属学会
歯学博士
南カリフォルニア大学歯学部 研究員
インプラントセーフティーマーク認定歯科医師